2013年7月1日月曜日
農業×IT〜君に贈る新鮮な野菜〜
「最近、健康を気にしてて無農薬の野菜を食べてるんだよね」
十沢が言った言葉を耳にした僕の行動力はすごかった。早速自社のクライアントを調べ、野菜を作っている所は無いかと血眼に探した。そして見つけた。
僕は早速、社長に直談判した。
「これからの時代、農業にITを活用していかなければ新鮮な野菜を全国津々浦々配送出来ないと思うんです。だから僕は"わくわく農園"に行き、その改革を推進してきます!」
この言葉とともに5部にも及ぶ企画書・提案書を渡したら社長はゆっくりと首を立てに降った。
これで十沢に新鮮な野菜が届けられる!僕は心の奥底でガッツポーズをした。もちろん、津も浦も全部十沢あてである。僕はただ聞きたいだけだ。十沢の「ありがとうな、手崎」と言う言葉を……
早速、"わくわく農園"に出向いた。ここはITのIの字も無いほどのどかな農園だった。何故、IT企業である我が社のクライアントになっていたかというと唯一あるパソコンが壊れてその修理を依頼していたらしい。なぜうちだったのだろうか……まあどちらにせよ、僕にとっては願ったり叶ったりだった。
さて、農場責任者の了承も得た。水分量、農薬量、肥料の量など野菜に必要な成分を自動で観察してくれるセンサーや制御装置、遠隔操作をするためのネットワーク設備、ソフトウェア、ついでに農園のパソコンを最新機種にした。
これで準備は万端。下手したら都会に居ながら農業が出来る―――
半年後、丸々太ったなすが出来上がった。さてこれを十沢に……僕の電話が鳴った。実にタイミングがいい。十沢だ。
「もしもし」
「おー!手崎、久しぶりだな。仕事がんばってるのか?」
「ああ、がんばってる」
お前のためにな。
「そうかー、IT業界って業務量多いんだろ?あまり無理すんなよー」
「そ、そんなやわじゃない」
ああ、十沢。なんて優しいんだ……
「ところで、最近羅臼が家庭菜園始めたそうなんだ」
「え……」
「それがすごく本格的でな。後で画像贈るわー。お裾分けを貰ったから明日、鍋でもやろうや」
「あ、ああ」
電話を切った。早速十沢から画像が届いた。そこには僕が作ったなすよりもふた周り以上太ったなすの画像があった。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。羅臼の奴羅臼の奴羅臼の奴羅臼の奴羅臼の奴羅臼の奴羅臼の奴羅臼の奴。僕の野菜の方が僕の野菜の方が……
やめよう。きっと"わくわく農園"という土地が元々肥沃じゃないからだ。だったらもっと肥料を足して日の光を与えて……
いくらでも調整は出来るはず。家庭菜園なんかに負けないんだ絶対。
僕は決心した。ここの農家を日本一……世界一にすると。
十沢、みててくれ。そして約束してくれ。もし、僕が世界一の農家になったら頭を撫でて褒めてくれる事を――……
とりあえず、敵状視察として明日の鍋は楽しもうじゃないか。
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